太陽を背負うか、追いかけるかという選択
三浦半島を走るとき、ルート選びには絶対に外せないひとつの法則があります。
それは「時計回り」に走ることです。
これには明確な理由が二つあります。
一つは、左側通行の日本において、時計回りの方が海側に車線があるため、ガードレールや対向車に視界を遮られることなく、常にすぐ横に海を感じながら走ることができるからです。
コーナーを抜けるたびに広がる水平線との距離感は、反時計回りでは決して味わえない没入感があります。
そしてもう一つの理由は、朝活における太陽の位置関係です。
横浜横須賀道路を降りて、観音崎から浦賀、そして三崎へと向かう東側のルートをとれば、東から昇る太陽を追いかけるように走れます。
背中から暖かい陽射しを浴びるのではなく、眩しいほどの朝日を正面や左手に感じながら走るのは、体内の細胞が一つひとつ活性化されるような心地よさです。
特に冬場の朝は、低い角度からの光が海面に反射してキラキラと輝き、まるで光の道の上を走っているような神々しい錯覚さえ覚えます。
交通量も少なく、自分のペースで緩やかなカーブをクリアしていく感覚は、バイクと身体が一体になる喜びを再確認させてくれます。
ただ走るのではなく、光と道を計算に入れて走る。
それが三浦半島の楽しみ方です。
城ヶ島公園のベンチと特別な静寂
半島の最南端、城ヶ島に到着したら、そのまま港へ直行するのではなく、ぜひ城ヶ島公園まで足を延ばしてみてください。
有料駐車場が完備されていますが、嬉しいことに二輪車の利用は「無料」です。
バイクを降り、ヘルメットを脱いで松林の小道を抜けると、視界の先には太平洋が一望できる雄大なパノラマが待っています。
私が個人的に気に入っているのは、海に向かって設置された少し塗装の剥げたベンチです。
ここに座り、自宅から持参した水筒の熱いコーヒーをカップに注ぎます。
眼下には荒々しい岩場に白波が打ち付け、遠くには房総半島のシルエット。
風が強い日は少し厳しい環境ですが、穏やかな凪の朝には、ここ以上の特等席はありません。
観光客やカップルで賑わう昼間の城ヶ島とは違い、朝の時間は釣り人と数人の地元の方が犬の散歩をしている程度です。
聞こえてくるのは風が松を揺らす音と、遠くを行き交う大型船の低い汽笛だけ。
スマホの通知もオフにして、ただ海を見つめ、ぼんやりと思考を巡らせる時間は、日常の忙しさや人間関係で凝り固まった心をゆっくりとほぐしてくれます。
何も生産的なことをしない時間を持つこと、それこそが現代において最も贅沢な遊びなのかもしれません。
朝の三崎港で味わう、透き通った旨味
城ヶ島大橋を渡って再び三崎港へ戻る頃には、海風に当たってお腹も心地よく空いてくる時間です。
三崎といえばマグロ料理が有名ですが、観光ガイドに載っているような豪華な丼ぶり店が開くのはまだ先のことです。
しかし、私たち朝活ライダーが目指すべきはそこではありません。
毎週日曜の早朝だけ開催される「三崎朝市」こそが、本物の朝ごはんを提供してくれます。
ここには、観光客向けの派手な盛り付けや過剰な演出はありません。
注文するのは、新鮮なマグロの赤身が乗ったシンプルな丼や、その日の地魚を使った定食です。
朝の冷えた体に、出汁の効いた温かい味噌汁が染み渡るとき、生きていてよかったと大げさでなく思います。
市場ならではの活気ある雰囲気、飛び交う威勢の良い声、そしてトラックのエンジン音。
その中で食べる朝食は、洗練されたカフェのモーニングとはまた違う、力強い生命力に溢れた味がします。
食事を終えたら、お土産に冷凍のマグロや干物を買ってパニアケースに収めるのも良いですが、その場で味わう空気感こそが何よりのお土産です。
お腹が満たされたら、帰りの渋滞が始まる前にサッと高速へ。
この潔さと満足感が、また次の週末も走ろうという意欲を掻き立ててくれるのです。
