雨雲レーダーと睨めっこするより橋を探そう
湘南の空は気まぐれです。
さっきまで晴れていたのに、海の方から急に黒い雲が湧き上がり、あっという間に通り雨が路面を濡らすことがあります。
多くのライダーは舌打ちをして、慌ててカッパを着るか、濡れながら家路を急ぐでしょう。
しかし、私はこの突然の雨を、神様がくれた休憩時間だと捉えるようにしています。
ただし、それには条件があります。
濡れずに愛車と自分を守ってくれる、巨大な「屋根」を知っていることです。
私の頭の中には、エリアごとの橋の下リストが入っています。
例えば西湘バイパスの高架下や、国道134号線の相模川にかかる湘南大橋の下、あるいは新幹線の高架下など。
これらは単なる道路構造物ではなく、ライダーにとっては緊急避難的なシェルターであり、時には秘密基地のような趣を持つ休憩スポットです。
雨粒がヘルメットのシールドを叩き始めたら、焦らずに最寄りの「屋根」を目指してバイクを滑り込ませます。
コンクリートの巨大な天井に守られた空間に入った瞬間、走行風と雨音の轟音がフッと遠のき、不思議な静寂に包まれる感覚。
これがたまらなく好きなのです。
コンクリートの美学と雨音のBGM
橋の下にバイクを停めたら、まずはエンジンを切ってヘルメットを脱ぎます。
頭上では、通り過ぎる車の走行音が定期的に響き、外では激しい雨がアスファルトを叩いています。
しかし、ここは濡れません。
濡れた路面が街灯や車のライトを反射して光る様子や、雨脚の強弱によって変わる音のリズム。
普段は見過ごしてしまうような雨の情景を、安全地帯からゆっくりと観察することができます。
ここで取り出すのが、シートバッグに常備している保温ボトルのコーヒー。
無機質なコンクリートの柱を背もたれにして、湯気の立つコーヒーを啜る。
湿った空気の中で香るコーヒーは、晴れた日のそれとはまた違った、深く落ち着いた香りがします。
目の前には、雨に打たれて艶を増した愛車。
水滴がタンクを伝い落ちる様さえも美しく見えてくるから不思議です。
「早く止まないかな」とイライラするのではなく、「もう少し降っていてもいいかな」と思える心の余裕。
雨宿りというハプニングさえも、日常から切り離された特別な時間に変えてしまうのです。
雨が上がった後の、世界で一番綺麗な空
30分もすれば、通り雨は大抵去っていきます。
橋の下から空を見上げ、雲の切れ間から青空が覗いた時の安堵感は、雨宿りをした者だけが味わえるギフトです。
雨上がりの空気は塵が洗い流されて澄み渡り、視界が驚くほどクリアになります。
濡れた路面は滑りやすいので注意が必要ですが、キラキラと輝く世界の中を再び走り出す瞬間は、まるで生まれ変わったような清々しさがあります。
もし、貴方がツーリング中に雨に降られたら、無理に走らずに橋の下を探してみてください。
そこには、ただやり過ごすだけではない、豊かな時間が流れています。
お気に入りの高架下を見つけて、Googleマップにピンを立てておく。
それが増えるたびに、雨の日に対する憂鬱が少しずつ減っていき、むしろ「あの場所で雨音を聞こうか」なんていう酔狂な楽しみさえ生まれてくるかもしれません。
高架下を利用する際は、他車の通行を妨げないよう、必ず正規の駐車場や駐停車禁止指定のない安全な場所を選定してくださいね。
