AM5:00の冬と、AM9:00の春という二つの季節
春や秋のツーリングは、一年で最も景色が美しい反面、服装選びが最も難しい季節でもあります。
なぜなら、私たちがエンジンをかける早朝5時の気温は一桁台で、体感温度は氷点下に近い冬そのものだからです。
しかし、日が昇りきり、帰路につく9時頃には気温が20度近くまで上がり、まるで初夏のような陽気になることも珍しくありません。
この10度以上の激しい寒暖差に、厚手のウインタージャケット一着だけで挑むのは無謀と言えるでしょう。
朝は快適でも、帰りの渋滞や信号待ちではサウナスーツのように汗だくになり、その汗が休憩中に冷えて風邪を引くという悪循環に陥ります。
そこで重要になるのが、状況に合わせて玉ねぎの皮のように脱ぎ着ができるレイヤリング(重ね着)の技術です。
ベースとなるアウターには、防風性能のあるレザージャケットや、ベンチレーション機能がついた3シーズンジャケットを選びましょう。
そして、その下に仕込むミドルレイヤー選びこそが、朝活の快適さを左右する最大の鍵となります。
私が長年愛用し、もはや朝活ライダーの制服だとさえ思っているのが、ユニクロのウルトラライトダウンコンパクトベストです。
袖がないベストを選ぶ理由
なぜ長袖のダウンジャケットではなく、ベストなのか。
それには明確な理由があります。
バイクのライディングにおいて、腕周りのゴワつきは操作性の低下に直結します。
袖があるダウンをジャケットの下に着込むと、腕がパンパンになり、ハンドルの取り回しやブレーキングが窮屈になってしまいます。
しかしベストであれば、体幹(コア)と呼ばれる身体の中心部をしっかりと温めつつ、腕や肩の動きはフリーなまま。
重要な臓器が集まる胴体を温めれば、温かい血液が末端まで循環するため、袖がなくても意外なほど全身が温まるのです。
そして、日が昇って背中に陽射しを感じ、「少し暑いな」と感じたら、我慢せずにすぐにバイクを停めます。
ここからがウルトラライトダウンの真骨頂です。
ジャケットの下に着ていたベストを脱ぎ、付属の小さなスタッフバッグに詰め込めば、350ml缶ほどのサイズにまで圧縮できます。
これなら、シート下のわずかなスペースや、サコッシュの隅にも放り込むことができます。
脱いだジャケットをくくりつける場所に困ることもありません。
インナー選びで決まる「汗冷え」対策
レイヤリングの仕上げとして、肌に直接触れるインナーウェアにも気を配りたいものです。
冬場はヒートテックなどの発熱インナーを着がちですが、これらは吸湿発熱という性質上、一度大量に汗をかくと乾きにくく、逆に身体を急激に冷やしてしまう、汗冷えの原因になることがあります。
運動量の多いバイク操作や、気温が上がる日中を考慮すると、登山用のアウトドアブランドが出しているベースレイヤーや、あえて夏用の速乾冷感インナーを着るのも一つの手です。
寒ければ着る、暑ければ脱ぐ。
言葉にすれば当たり前のことですが、この調整を荷物を増やさずに、スマートに行えるかどうかが、ベテランライダーの腕の見せ所です。
気温の変化を不快なものとして捉えるのではなく、着脱によってコントロールするゲームのように楽しむ。
そんな余裕があれば、気まぐれな季節の空気さえも、心地よい旅の道連れになるはずです。
